8(エイト)と9(ナイン)
Prrr... Prrr...
ロンドンのヒースロー空港に着いたら、何時頃にホストファミリー宅の最寄り駅に着くか、連絡する約束だった。
が、スマホは使えないし(wifiルーターは持っていかなかった)、前回の記事の通り、公衆電話も使えずに困っていた。
しかし、連絡しないと駅まで迎えに来てもらえないので、高額請求を覚悟し、私は既に乗っていたファミリー宅の最寄り駅行きの電車内で国際電話をかけた。
が、一向に出ない。
Prrr.......
次で10回目... というときに、やっと電話がつながった。
"Hello?"
「あ、ハロー」
...........................
外国人と、英語で、顔の見えない電話で会話をするのは初めてで、何と言えばいいのか初っ端から沈黙をつくってしまった。
それに、日本ではこれだけ電話を待たせると、
「お待たせしました...」という謝罪が入るものだが、それもない。
私が何を言おうか戸惑っていると、
"Are you 〇〇?"
と聞いてきた。
そうだ、こちらから電話をかけておいて、名乗ってもいなかった。
そこで私はようやく名を名乗り、今電車に乗るから、午後8時にはそちらの駅に着くはずだ...と言ったつもりだった。
が、私が到着時間を口にしたとき、通路を挟んだ隣の席のおばさまが、怪訝な顔でゆっくりと腕時計を確かめているのが目に入った。
私は、なんとなくその方の行動が気になり、もう一度電話越しに到着時間を伝えた。
その女性は、もう一度ゆっくりと腕時計で時間を確かめていた。
そして私は予定通り午後8時に駅に到着し、迎えに来ているはずのホストファミリーを探した。
が、見当たらない。
一人で外国に来たのは初めてだった私は、『外国人はルーズは人が多い』というネットの情報を信じ込み10分程度待っていた。
が、だんだんと不安になってきて、ふと時計を何度も確認していた女性を思い出し、私は重大な間違いをしてしまったことに気が付いた。
「エイト」と「ナイン」を言い間違えたのだ!
私は、どきどきしながら再び電話を掛け、
"Sorry, I just arrived..."
と言い、その後ようやくホストファミリーと会えたのである。